ソプラノ歌手の澤田理絵さんにとって、エミリーは初めての盲導犬だ。97年の出会い以来、彼女たちはともにコンサートのステージに立ちつづけている。
「物怖じせず、最初から共演してくれましたね。性格によっては、大勢の前に出るのはダメな犬もいるんです」
盲導犬への理解は深まりつつある。しかしそれでも、欧米と比べてまだまだと感じることが多いと澤田さんは言う。
「最近は減りましたが、飲食店での入店拒否は多いです。『盲導犬なんです』と言っても『でも犬ですから』と言われてしまうんですよね。それに東京には排泄できる場所が少ないんです」
そのため昨年5月には、盲導犬・聴導犬・介助犬の受け入れを拒んではならないとした「身体障害者補助犬法」が成立。今年10月からは民間施設でも適用される。
盲導犬として活躍できる期間は平均8〜10年といわれる。役目を終えた犬は、余生を『リタイヤ犬ウォーカー』のもとで過ごし、最期を看取られる。
「エミリーと私もいつか必ず別れがやってくる。仕方のないことですが、やっぱりそれを考えるとさびしいですね」
*********
「ブリーディングウォーカー、パピーウォーカー、ユーザー、リタイヤ犬ウォーカーだけではありません。訓練士や協会のボランティアの方々など、盲導犬の周囲ではみんなが思いやりの心で活動しているんです」
と語る前出の石黒氏が伝えたいのは、盲導犬を通じ、その心も人から人へバトンタッチされているということだ。 |